もうすぐ中学生---中学生活に向けて 2010.3.17.改訂


 もうすぐ中学生。期待と不安が交差するなかで中学生活がスタートする。子供ではなく、かといって大人でもなく、12歳から15歳までの3年間は長い人生の中でも重要な成長期だ。小学校を卒業し、中学校に入学し、そして高校入試と、3年間は波乱と試練に満ちている。そんな時期の子供をもつ親の心は揺れていよう。しかし、中学生になった子供に対して親がしてやれることは少ない。では、中学生活にはどんなことが待っているのか、親の心情を交えながら考えてみよう。

 

アンバランス

 中学校時代は、心も体もぐんと大きくなる。一生で一番の成長期といっても過言ではない。そして思春期の真っ只中。生物学的にも心理学的にも大きな変化のある時期だ。そういう時期に、小学校から中学校へと環境はもちろん、勉強の内容も変わり精神が敏感になって、いろいろなことに傷つきやすくなる。変化が急であるから体や心の発達にアンバランスを生じるからだ。教師や両親に対して不満をもったり反抗的になるのもこの時期。最近問題が大きくなっているいじめや登校拒否も中学生に多い。平成5年度における登校拒否児童生徒数は、小学生約1万1千人に対して中学生は4万9千人。学校の責任が厳しく問われるなかで、いじめに気付いた教師が手を差し伸べようとしても、生徒自身が「自分の内面に触れられたくない」と教師をシャツトアウトしてしまう例も少なくない。こうしたなか、平成6年の文部省調査では、中学生の40.7%が教師への不満を訴えている。小学生22.3%、高校生35.6%と比べると断然多い。本当はこの時期は中学生の内面のSOSを受け止めてくれて、たとえ少々道を踏み外してもすぐ戻してくれるような、頼りになる人が必要なのだが、現状ではその役を担える教師は少ないといえる。 

 

支えになる友達

 中学生が学校生活で楽しく思うことの第一位は「友達との遊ぴ」である。たいていの子は「友達とのおしゃべり」で気持ちをリラックスさせる。相談ごとも両親や先生より友達にすることが多い。いい友達を持てぱ、悩みも打ち明けられるし行き詰まったときに助けてもくれる。親は、仲間ができるチャンスや仲間を見つける力を子供につけさせることが必要である。ところで、心の友があることは子供にとって大きな支えだが、憩いの場も大切である。体や心を休養させ、次のステップヘと向かう英気をやしなえる場があることが救いになることは、何も子供に限ったことではないだろう。特に、安心できる場所や自分をさらけだせる場所が家庭であれぱ最高だといえる。 

 

家庭生活

 中学生といってもやはりまだ子供。目を離してはいけない。学校でいじめの対象になっているかもしれないし、また学年が進むにつれて色々な悪の誘惑も増えてくる。髪の毛が茶色くなったとか、スカートが短くなったとかの目につきやすいことだけでなくても、親がジッと見ていればどこかで気付くはずだ。もし変化に気付いたら、早く真剣に取り組むこと。登校拒否や非行の子供たちの相談にのっているカウンセラーの一人は、「子供が大変な火事に巻き込まれているのに、対岸がら火事を消そうとする親が多い」と言っている。火事に気付いたら、火中に入って必死に消さなけれぱ、子供の心は親の元に戻ってこない。母親が一生懸命なのに、父親は知らんぷりという家庭も多い。父親の存在価値がなくなったとか、権威が低下しているとか言われるが、中学生同士の会話には意外に多く父親が登場する。子供のことを母親ひとりで悩まないで父親の出番を作っておくと、学校との対応もこじれずに済むことも多いのだ。 

 

勉強の習慣

 自分の子供が、何も言われなくてもきちんと勉強をしているという親は、ただ黙って見守っていればいい。しかしこんな幸せな親は少ない。小学校時代によくできた子が、中学校に入って段々成績が落ちていくのは珍しくない。この一番の原因は勉強の習慣がついていないからだと言える。中学に入学して、まず必要なのは、勉強そのものより勉強のやり方を身につけることである。まず第一に机にすわる習慣をつけること。これが身につくまでにはそれなりの努力がいる。本来は小学校のうちにつけておくベき習慣だが、意外にこれができていない。勉強でなくても、雑誌を読んでいるだけにしても、決まった時間に机にすわる習慣をつけれぱ大きな力になる。中学一年生になったらまずここから始めたい。この習慣が身につくまでは相当の期間が必要で、高校入試が近づいてからでは絶対に無理であることは間違いない。

 

勉強方法と塾

 いつまでもテレビを観ている。やっと机に向かったと思ったら今度はマンガ。しかし「勉強しなさい」と責めたてると反発を招いて逆効果である。かといって「もう中学生なんだから」と、急に手を引いてしまうのも考えものだ。中学校に入ってから勉強がつまらなくなってあきらめてしまう子が少なくない。小学校では先生に言われたことだけをやっていてもついて行けるが、中学校ではそうはいかない。これがうまくいかないといつの間にが落ちこぽれてしまうことになる。親としては注意の仕方が難しいが、何も言わなければ何もしない子になってしまう危険性もある。しかし「予習と復習をやりなさい」では、具体的に何をやっていいのか子供には見当がつがないのだ。

 勉強方法がつかめないまま中学校の後半になると、あまりの成績不振にあわてて塾へ駆け込む親がいる。しかしこれではもう手遅れで、塾へ入ったからといってすぐには成績は向上しない。親が子供を塾に通わせる理由は、「子供が希望するから」「家庭で勉強をみてやれないから」「一人では勉強しないから」「学校の授業だけでは受験勉強が十分できないから」などである。その中の2割の親は、子供の塾通いは好ましくないと思いながらも塾に入れているのが現状だ。中学校の先生は「予習と復習が大切」と言いながら、やり方の具体的指導がないのが普通で、塾を頼らざるを得ないという事情もあるのだ。

 

勉強のポイント

(英語)

 中学校では英語の勉強が始まる。最近では中学入学以前に英会話教室に通ったり、テープ教材で勉強している子供も少なくない。そこで中学校入学以前に英語を学んだ経験を持つ子と、入学後に初めて英語に接する子ではどれほどの違いが出るかと興味のあるところだが、一年生の段階では学習経験のある子のほうがよい成績をとるが、二年生になると、経験の差はほとんどなくなってしまう。中学校で初めて英語に出合う子は、授業が新鮮で緊張を保ちながら学習をし、反対に経験のある子は「わかりきったことばかリ」と、最初の段階で油断することが多い。経験を生かして自信をもって学習を続けられると好結果につながるが、無理をしてまで入学以前に学習を始める必要はない。

(数学)

 中学生になると数学が苦手になる子が多い。この一番の原因は、小学校で学習した算数がきちんと身についていないからである。こういう子は、中学校一年生でもう数学につまずく。中学校入学までにまだ時間のある時期に、計算の復習だけはしっかりしておきたい。もし間に合わなけれぱ、入学後でも一学期の比較的授業進度のゆったりしているうちに復習しておくべきだ。

(国語)

 国語はすべての教科の基本になる。読解力がなければ数学の問題も理科の問題も解けない。それだけに、国語が好きになるがどうかで、中学生活の楽しさまで変わってくる。中学校になると、古典や漢文・文法も出てくる。英語と同じで、新しい気持ちで興味を持って接すると今まで国語が嫌いだった子も国語好きになれるチャンスがある。国語の予習は、何といっても声を出して何度も読むこと。声を出して読むのと出さないのとでは国語力がずいぶんちがってくる。繰り返し読むことで、授業での理解度がグンとよくなる。ということは、国語ではより予習に重点を置くこと。言い古されているが、読書も読解力を増して国語力をつける効果がある。たとえマンガであっても雑誌であっても、読まないよりはずっとよく、読んでいるうちにいい文章と悪い文章を見分ける目ができる。

(社会)

 社会は単に暗記すれぱ成績が伸びるように思われているが、本来社会科は身近なでき事をより深く理解するための力を育てる教科である。したがって、テレビの大河ドラマや紀行番組、ニュースもすべて社会の勉強につながっている。社会はまず、机の上ではなく身近なことに興味を持つことから始まる。興味を持ったものがあったら、とことん好奇心を追求すること。それが社会を好きになる秘訣である。

(理科)

 小学校で習う理科は、身の回りで起こる現象の観察が中心だが、中学校の理科ではなぜそうなるのかという仕組みや原理にポイントが置がれている。疑問の解明という点では、小学校時代よりおもしろく、中学校に入ってから理科が好きになる子も多い。またさまざまな実験を行うことで興味がより身近になる。小学校の時に理科が苦手であっても、それほど心配する必要のない教科でもある。しかし計算問題でつまずきやすい。中学校の理科は、物理・化学の第一分野、生物・地学の第二分野に分かれている。手こずるのは第1分野の計算問題だ。せっかく理科に興味を持っても、小学校の算数がしっかり身についていなかったために計算ができず、理科嫌いになってしまう子もいる。数学と同じように、小学校時代の計算をしっかりマスターしておく必要がある。

 


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