徒然日記その111. ユア・ペース。 (9/3)

 名古屋市内の公立中学校では、中3になると高校受験用というか中学3年間総復習用というか、英・数・国・理・社の5教科の問題集を学校で購入する(させられる)。「マイペース」とか「新研究」とか「学習と完成」とか、中学校や年度ごとに使う問題集は異なるようだ。また、教科ごとに問題集が異なる場合もある。

 さて、今回はこの5教科の問題集について書いてみたい。総合的な問題集で中学3年間の総復習をやって高校受験に備えるのは大いに結構である。しかし、この問題集の使い方に対して、私は「?」なのである。使い方も学校によってまちまちのようだが、基本的に「予定表」なるものを配布して、「いついつまでにXXページまでやって提出せよ」なのである。そしてたいてい「成績に組み入れる」という脅し文句(?)がオマケでついている。これってヘンだと思いませんか?

 生徒によって学習のスピードは違うはずである。さらに学力だって差がある。これは当然のことであって、決して悪いことではない。ところが、学習のペースは全員同じと決められているのだ。これでは、学力の高い生徒は物足りないだろうし、そうでない生徒にとってはとてもツライと思う。そこで何が起こるかと言えば、答えを丸写しして提出すること。「成績に組み入れる」なんて言われたら提出しないよりも提出した方がよいと考えるらしい。だからこうなってしまうのだ。

 さらに、テストのおまけがつく。どうやら問題集とセットになっている出来合いのテストのようであるが、これらを使って何回かのチェックテストが行われる。これも「成績に組み入れる」という学校が多いようだ。出来合いのテストを使うなんて、「業者テスト禁止(廃止)」の精神に反すると思うのだが。これは教師の手抜きでもあると思う。

 この中3用の5教科問題集が象徴するのは、教える側の「教育の横並び意識」である。全員に、同じことを同じペースで勉強することを強要しているのだ。学力や理解度には差がある。当然である。ところが、これを無視して同じことを同じペースでやらせようとしているのである。「こんなのマイ・ペースじゃなくてユア・ペースだよ」とはある塾生の言葉。あまりに的確で笑ってしまった(笑えない現実があるんだが)。

 この結果、様々な歪みが出てくるのは当然である。来年度から履修内容が削減されても、「教育の横並び意識」が続く限りなんの進歩も改善も期待できないんじゃないかなあ・・・。個性だのなんだの言いながら、全然個性を尊重してないと思うのは私だけなのだろうか。いやはや。

 


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