徒然日記その94. 学習塾のマイナス効果? (4/9) 

 そもそも「学力」とは何であろうか。入試や受験を考えた時は、「学力」=「テストでの得点力」と言えるだろう。要するにどれくらい正解を書けるかということであり、これを表す一つの指標に偏差値があるとも言えるだろう。では、「テストでの得点力」を上げるにはどうしたらよいか。勉強すればいいのだが、どんな勉強をしたらテストでの得点力が「手っ取り早く」上がるだろうか。中学の内容について考えてみよう。

 教える立場から見ればこうである。「すでに身に付いている知識や思考回路だけ」での問題の解法を教えればよいのである。例えば「2点(1,2)と(3,5)を通る直線の式を求める」にはどうすればよいか。

教科書的解き方はこうである。

直線の式は y=ax+b とおける。これに
(1,2)を代入して2=a+b
(3,5)を代入して5=3a+b
この連立方程式を解く。

一方、連立方程式を使わない解き方もあるのだ。

傾き=(yの増加量/xの増加量)だから、
xの増加量は1→3で2
yの増加量は2→5で3
よって傾き=3/2
式はy=(3/2)x+b とおける。これに(1,2)か(3,5)を代入してbを決める。

つまり連立方程式が解けない生徒でもこの問題を解ける(ように教えることができる)。さて、みなさんはどう思われるだろうか。後者は、教科書的解き方のわからない生徒でも正解までたどり着けるわけだ。だからそういう生徒にこの方法を教えれば「先生ってスゴイ」となる。しかし考えてもみて欲しい。ここで連立方程式をマスターする(勉強し直す)チャンスを失っているのである。これではいつまでたっても「未知数1つ」の一元一次方程式の世界から脱却できない。これでいいのか?他の教科でも同様である。学習塾(進学塾?)では成績を上げてナンボの世界である。だから最短時間で最も得点力の上がる方法を教える。でもこれでは進歩が無いと思いませんか?新しい考え方は何も身に付かないのですから。

 愛知県の公立高校入試を考えた時、(愛知県公立高校の)入試問題は簡単であるから(私は簡単すぎると思う)こういう「付け焼き刃」で十分通用する。数学の立体切断問題(愛知県はこういう問題をよく出す)で、切断の結果できる立体がどういう立体か分からない子供が多ので(幼児期に図形に親しむことをおろそかにしているから頭の中で立体をイメージできない)、頂点を数えて立体の種類を判別する方法を教える塾もある。頂点4つなら三角錐,5つなら四角錐,という具合である。あとは機械的に公式で体積を求めるだけ。とりあえず得点できる可能性は高まる。でもその先に何があるのだろうか。高校数学ではこんなことは通用しないのだ。

 私が考えるのは、本来もっと伸びるはずの子供(真の意味で学力をつけることができる子供---潜在能力が高い子供とでも言おうか)に対しても「付け焼き刃」を教え込んでいることである。これは伸びる芽をつみ取っているのに等しい。こういう所(塾や予備校)に通わせて成績が上がった下がったと一喜一憂している親は愚かであるとも言える。子供は哀れとも言えるだろう。高校受験が最終目標ではないと思うのだが。高等部(大学受験科)を始めた大手塾があったが、大学受験の結果はガタガタのようである。大学受験に「付け焼き刃」は通用しないのであるから当然とも言えるか(教える側の能力にも問題があるかも)。

 


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