子育て日記 その3  2006.8.15.


スポコンものを書こうという訳ではないが、もう1回だけ、次男が所属したドッジボールチームの話のつづき。

 

その○○○○スターズは、5年ほどの歴史の中で最も有望な年を迎えていた。それは、人数が揃っていて、しかもレギュラーを6年生で構成できているためだ。ひょっとしたら……全国も。その期待感から、鬼監督の練習にガゼン熱がこもった。土曜日は1日中、日曜日は練習試合といった具合だ。その中で、体格に恵まれた次男の背番号は、次第に若くなっていった。

公式試合が目白押しの秋には次男のアタック力は勢いを増し、ついにエースアタッカーとして最前線でコートに立つことになった。

しかし、自信がない。次男は、活発で能弁でいつもリーダー格の長男の陰で育ち、自己主張をすることも賞賛されることも少ない人生を歩んできた。人前に立ったことがなく、まして組織の柱になったことなどない。成功体験に乏しいのだ。コートでも人まかせにしようと言う気持ちがつい出る。

その次男に、監督がコブシを振ってゲキを飛ばす---「前に出ろ!前だ!」「お前しかいない。それがわからんか!」「お前がアタックすればチームが勝つ」

次の試合も、その次の試合も迷いの中でコートの最前線に立たされる。ついに全国大会予選が来た。この試合に勝てば全国だ。愛知県50チームのうち8位に入ればいい。負ければそれはない。

「チームの皆がお前のアタックを望んでいる。全国に連れてってくれ」監督の願いの中で敗者復活戦もすでに終盤。人数は一人負けている。残り10秒もない。観戦のお母さん達が次男の名を叫ぶ、「アタックだ!」「時間がない!」「倒せ!」悲鳴の中、外野の彼が放った渾身のアタックが相手を捕らえた。逆点。7位通過。

その瞬間、「やった」「すごい」と歓声が渦巻いた。彼に賞賛の声が浴びせられた。ポーカーフェイスの彼にもさすがに笑みがこぼれた。

 

好むと好まざるにかかわらずやるしかない。そういう時がある。自分の力が人を幸福にすることがある。そして、その先に賞賛もある。きっと彼はその成功体験を得た。小学校の経験などは、その時は些細なものだと思うが、人生においてそれが大きな自信や心の支えになることがある。彼に人生で初めてスポットライトを浴びるという何事に代えがたい体験をさせてくれたチームと監督には感謝しても感謝しきれない思いだ。

 

(・・・と、歓喜の中、小学生を終えたこいつは、「解放された!」とわめいて、また転がってゲームとにらめっこの怠惰な中学生活を始めている。)

 

(スポコン 了)


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