愛知県の高校比較 失敗しない受験校選びのために(その1) (2010.9.24.)更新
高校生の二人に一人が大学に進学する時代となって大学が身近になる一方で、難関大学とそれ以外の大学の「格差」が言われるようになっています。それをうけて高校の「進学指導力」が注目されるようになり、大学進学のための学習指導に力点を置いた、いわゆる「特進コース」を設置する私立高校が増えています。また、公式ホームページに大学合格実績を掲載する高校も私立・公立問わず増えています。
このような背景で、高校選びの1つの尺度として高校の「進学指導力」が注目されていることは疑う余地がないでしょう。では、実際には各高校の「進学指導力」はどうなのでしょうか。今の中学生の親御さんは、(愛知県の)学校群時代に高校受験を経験されている方が多いと思います。そこで、学校群時代と現在を比較しつつ、高校の「進学指導力」を分析してみます。
・何が変わったのか?
学校群時代(1980年代)と現在で、愛知県の高校入試の何が変わったのでしょうか。挙げてみましょう。
・公立高校入試が学校群制度から複合選抜制になった。これにより、公立高校は最大2校を組み合わせて受験できる。第1志望と第2志望を決めて受験するので、学校群制度のような「合格してもどちらの高校になるかは分からない」ようなことはなくなった。
・公立高校入試でも推薦入試が導入された。普通科は定員の10%程度を推薦枠としているが、上位校ではハイレベルな受験者が推薦枠より多いので、不合格となる受験生の方が多い。(一般入試で再度受験できるが)
・通知表が相対評価から絶対評価に変わった。
・小中学校が土曜休みとなって、完全週休二日となった。
・男子校や女子校だった私立高校の多くが共学化した。それに伴い校名を変更したところも多い。
・多くの私立高校で推薦入試が拡大導入された。定員の80%が推薦入試で決まる私立高校も少なくない。
・私立高校の中には、中高一貫コースに注力して、高校からの募集を停止したところがいくつかある。
公立高校入試における最大の変化は、複合選抜制の導入でしょう。これにより「合格してもどちらの高校になるかは分からない」ようなことはなくなったことは大きな変化といえます。また、複合選抜制度では2校を選んで受験できますが、組み合わせに制限があります。また、難易度と通学のことを考えると実質的な組み合わせは多くなく、組み合わせは固定化する傾向にあるようです。それによって、学校群時代とは受験生の動きが変わって、公立高校の難易度に変化がみられます。
もう1つの重要な変化は、通知表が相対評価から絶対評価に変わったことです。相対評価では5が10%,4が20%・・・というように比率が決まっていました。ですから、通知表が上がった生徒があれば必ず下がる生徒がいました。ところが絶対評価では、設定された基準を超えるとみな4や5となります。その結果、「成績インフレ」「内申点バブル」と呼ばれる成績優良者続出の状態が生まれました。絶対評価ではオール3(内申点合計3×9教科=27)ではもはや「真ん中の成績」とはいえず、内申点28.8が平均値であるという報告もあります。
・学校群トップ校の凋落
下のグラフは、名古屋大学合格者数の比較です。学校群時代の合格者の多い順に愛知県内の高校を左から右へ並べてあります。その横には最近3年間の平均値も並べて表示してあります。合格者数が大きく変化している高校があります。
ここで注意したいのは、大学合格者数を比較する時どの大学で比較すべきかということです。私立大学は併願が可能ですから一人でいくつもの合格を出すケースがあります。ニュースになった例では、一人で有名私大を計73学部・学科に出願してすべて合格していたことがあります。その高校の大学合格者数のほとんどがその一人によるものだったとか。これは極端な例ですが、私大では一人で複数合格があることをおわかりいただけたでしょう。
一方の国公立大学は前期・後期の最大2大学を受験できますが、前期で合格した受験生の多くは後期を受験しないし後期の募集定員は大変少ないので、合格は基本的に一人1大学と考えて差し支えないでしょう。また、私立大学よりも受験教科が大変多く難易度が高いので、高校を比較するには国公立大学合格者数を比べるのが良いのです。
では、どの国立大学の合格者数をみると良いのでしょうか。難関大学に合格させる「進学指導力」を見たいのですから、当然、難関国公立大学ということになります。難関国公立大学のトップは東京大学、次に京都大学・・・となり、7つの旧帝国大学が最難関です。さらに、国公立大学の医学部・医学科も旧帝国大学並み(あるいはそれ以上)の難関です。これらは人気があって全国から受験生を集めます。そうなると愛知県の高校からの合格者の比率が少なくなるので比較には向かないことになります。ただし、さいわいなことに名古屋大学は例外です。愛知県は昔から地元志向がたいへん強いので、名古屋大学は旧帝国大学の中で例学的に愛知県出身者の比率がとても高いのです。データを見てみましょう。
2010年度入試における 旧帝大入学者の地元地区比率(%)
参考::サンデー毎日2010.3.28号
地元地区
地元率 (%)
前 年
北海道大学
北海道地区
54.7%
約5%増
東北大学
東北地区
48.8%
43%
東京大学
首都圏
47.3%
43.1%
名古屋大
中部地区
79.9%
ほぼ前年並み
京都大学
近畿地区
55.0%
0.3%増
大阪大学
近畿地区
59.1%
約6%増
九州大学
九州地区
77.8%
ほぼ前年並み
このように、名古屋大学では地元出身者が8割を占めているのです。ですから、愛知県の高校を比較するのには、名古屋大学合格数がベストなのです。