徒然日記その251. 昔のメールマガジンの原稿を(その5)  (6/10)

 

4年ほど前にはスクールネットさんはメールマガジンを発行していたのである。今回は私の寄せた原稿を紹介してみよう。基本的に修正無しのオリジナル原稿であるから、4年前の入試の仕組みや入試難易度などは現在と違っていることに注意して欲しい。

2002/12/1発行第7号の原稿

【R先生の塾日記メルマガ版】その6。受験界の困ったちゃん[その1] 内申点秀才

 言うまでもないが、愛知県公立高校の入試では通知表の素点合計---いわゆる内申点---が重要である。合否判定の約50%を内申点が占めるのであるから、いくら実力があっても通知表が悪ければ---つまり内申点が必要十分になければ---受験する前に「合格は無理。だから受験はダメ」ということになってしまう。そもそも内申点を重視するようになったのは、試験一発勝負では実力を発揮できない,あるいは実力は十分あるのにつまらないミスをおかして不合格になってしまう子を少しでも減らそうという配慮からのはずである。ところが実際には、実力はあるのに「門前払い」されてしまう子を生み出してしまった。なんとも皮肉なものである。これは内申点=通知表の付け方に問題があるからだ。意欲や態度を重視するあまり、通知表は、実力を"全く反映しないもの"に成り下がってしまっているのである。

 今回、特に書きたいことは、こういう状況が生み出した「内申点秀才」だ。そう、実力なんかないのにやたら内申点のある子のことである。なぜこんなことが起こるかというと、前述の通知表の付け方だ。教師うけが良ければ、テストで負けている子よりも通知表がいいなんていうのは日常茶飯事。さらに、学校間格差である。どこの都道府県でも同じようなものだと思うけれど、やはり学力の学校間(地域)格差は存在する。私の感覚では、レベルの低い地域の5は高い地域の3か4だ。通知表は校内だけのことだから、まさに井の中の蛙である。こういう子は模擬試験なんかを受けるとボロボロの判定が出るんだけど(志望校欄にはトップ校をならべるからね)、そういう客観的事実を認めない、というか、そのような判定の出る理由を理解できないようである(親もそう)。だって、校内順位じゃトップクラスだし内申点も「トップ校合格にこれくらい必要だ」と言われる数値を越えているんだから。愛知県では高校のレベルを必要内申点で語る風潮があって、旭○高校なら43とか明○高校は42とかいう会話がそこここで繰り広げられる。しかし、学校間(地域)格差が大きいのだから単なる内申点では合格可能性は推し量れないのである。例えばキミがいわゆるトップ校志望で内申点が40以上あったとしよう。愛知県の国語の入試問題を数年分やってみたまえ。制限時間内に余裕をもって満点がとれるかい?とれなければどこでも通用する5とは言えないと私は思う。国語だけじゃく他の教科でもそうだ。私の感覚では、低レベル地域の「内申点秀才」の内申42は、高レベル地域の実力があるのに通知表で評価されない内申32に負けると思う。

 まあ、そんな内申点秀才君や内申点秀才さんも、志望するトップ校に合格できちゃう場合もある。内申点ではボーダーをラクに越えているし、"とりあえず入試だけ”点を取らせる指導をしてくれる塾も多いし(愛知県の問題が簡単でよかったね)。さらに、真の実力者たちの半分は受験以前に門前払いされているから内申点秀才にとっては実にオイシイ(ついでに、合格実績だけを稼ぐことが大切な塾にとっても実にオイシイ)。じゃあ、合格できた「内申点秀才」はハッピーなんだろうか。私は不幸だと思う。自分の実力の無さを悟る機会を逃したわけであるから。

 そして3年後に思い知ってしまうのだ。それまでは現実に気付かないのである(気付けないとも言えるか)。いわゆるトップ校に通っていると「すごいね」「頭いいんだね」なんてチヤホヤされることがとても多い。親もチヤホヤされて、親子そろって鼻高々になってしまうのだ。成績が低空飛行でも「成績がおもわしくないのはトップ校だからであって、やっぱり自分は(ウチの子は)ハイレベルなのよ」と思ってしまう(私はこれを「幸福の3年間」と呼んでいる)。しかし、大学入試は実力勝負である。勘違いは永遠には続かないのだ。

 実力も無いのに評価され(て志望校に合格す)るなんて、実社会と正反対なことである。こんな制度を使うのは、私からすれば「アタマおかしいんじゃないの?」なのであるが、制度として施行されてしまっている以上は仕方ない。従うしかない。「悪法も法」である。今年度も、実力はあるのに内申点が足りなくて涙を流す諸君が少なからずいるのは大変残念なことだけれど、高校に入ることがゴールではない。高校での3年間を有意義に過ごして、3年後、「内申点秀才」たちを笑ってやってくれたまえ。え?自分は「内申点秀才」かも知れないからどうすればいいかって?そんなこと自分で考えたまえ。ああ、そうだ、「内申点秀才」の特徴をいくつか書いておこう。

・早くからテスト範囲をやたら気にする(人より早く試験範囲を知ろうと、先生を誘導尋問する)

・先生に「試験でどんな問題出すの?ここは出さないよね?」などと質問して、少しでも勉強範囲をへらして、少しでも点を取ろうとする(楽して点を取ろうとする姿勢が見え見え)

・学年順位や内申点に異様にこだわる

・なんでもかんでも丸覚えしようとする(理解しようとする姿勢がない、理解できないことは丸覚え)

・教科書ガイドをもっている

・辞書をひく習慣がない

・実力試験と定期試験の差が激しい

・定期テスト前には爆発的に勉強するが、普段は勉強する習慣がない

 などなど。

さあ、高校入試まで三ヶ月。一人でも多くが「笑えますように」。次回は、「内申点秀才」と双璧をなす、高校受験界の困ったちゃん「勘違い野郎」について書きます。

 


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