徒然日記その141. 腕の見せ所がない (5/27)

 新しい指導要領が実施されて最初の定期試験があった。1学期の中間試験である。内容が大幅削減されているし、中学校の授業進度もゆっくりなので、試験の範囲はスカスカである。例えば、中学3年生の数学は、カッコの展開と因数分解まで。これだけ見ると例年と変わらないのだけど、中身がスカスカなのである。

 例えばカッコの展開で。従来は、カッコの中が3項以上の展開---(a+b+1)^2(a+b=Mと置いて、(M+1)^2から展開していくテクニック---も習ったのだが、新しい教科書では消滅している。因数分解にしてもそうである。x^2-4xy+4y^2-25のように2段階で因数分解するテクニックも教科書から消えた。つまり、ちょっと難しくて修得に苦労する部分は軒並みカットされてしまったというわけである。生徒たちは苦労が減ったし、教える側も苦労しなくて済むようになったのかも知れない。しかし私はツマンナイのである。理解するのが難しい所をいかに教えるか、理解させて応用につなげるかが、腕の見せ所であって、私はそれを楽しんでいるんだけど。新しい指導要領は、私の密かな楽しみを奪ってしまうようである。

 それだけじゃない。すぐ分かることしか習わないとなると、「じっくり考える」とか「苦労して身につける」姿勢が育たないと思うのだ。数学だけでなく理科も英語も国語も全部がそんな調子なのである。さらに、近い将来、そういう教育をうけた人間が教壇に立つのだ。それって恐ろしいことだと思いませんか?「生きる力をはぐくむ」どころか「生きる力を奪う」教育だと思うんですけど。

 

脚注)^2 は、二乗をあらわします。


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