徒然日記その153. 入試問題で教育批判したって。。。 (8/19)

 知性とは、ある種のテストで良い点をとる能力や学校での成績がよいという能力のことではない。こういう能力は、せいぜい、もっと大きくて深くて重要ななにか(something)の指針に過ぎないのである。

この文は、高校生の英語の授業で使っている問題集に出ていた英文を訳したものである。入試問題集をやっていると、このテの評論によく巡り会う。書いてあることには全面的に賛同できるんだけど、載っているのが入試問題だっていうのがなんだかパラドックスぽくて、少し悲しい。だって、入試問題って、まさに「ある種のテストで良い点をとる能力」をはかるものでしょ。

こういうのもある。

 現在の教育やしつけの中で、この冒険心の育成がもっとも欠けています。合理主義の中で、子供時代から安全を第一義とした文化が与えられ、危険は大人の手で刈り取られています。だれだって失敗は許されない。そんなことをすれば落伍するどころか家庭や身内にまで累を及ぼす。だからつとめて他人の尻馬に乗るか石橋を叩く主義で世の中を渡る、それが教訓だというようにしつけられます。(手塚治虫「ぼくのマンガ人生」) 

これも入試問題につかわれた文である。私立中学校の入試問題だ(脚注1)。「他人の尻馬に乗る」って、まさに塾で受ける受験テクニックの指導だと思うんだけど。やっぱりパラドックスですな。

 ところで、愛知県公立高校の入試問題って、ふつうのレベルの私立中学の入試問題よりも簡単なのである。例えば国語。公立高校の問題でいつも95点以上(正確には9.5点以上=20問中19問正解か全問正解)とれても、私立中学の問題では半分もとれないのだ。そりゃそうである。要約問題にしたって(脚注2)、公立の問題では、要約すべき段落も指定してくれるし要約に使うキーワードだって指定してくれる。しかも、指定段落を単純に省略していってキーワードをつなぎ、文の結び(終わり方)さえ注意すれば簡単に要約できるのだ。それこそ「他人の尻馬に乗って」「訓練」すれば正解できるのである。ポイントが文章全体に渡っていてなおかつキーワード指定もヒントも何も無い私立中学校の問題とは雲泥の差である。そもそも要求される語彙レベルが全然違うのだ。そんなモノで高校受験生の学力をはかれるんだろうか。これは、共通の問題で行われる公立高校入試の泣き所なんだけど。通知表も変わったことだし、各高校が独自問題を用意してくれることを望んでいる。そうすれば、くだらない「訓練」だけで難関校に合格させることはできなくなるから、真の高学力生が難関校に集まるだろう。

脚注1)私は私立中学受験の指導はしないが、私立中学の入試問題で色々インスパイアされるので、好んで勉強する。担当以外の教科もね。

脚注2)愛知県の国語の問題では、字数指定の文章要約が出る。


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